【承継知識】社会福祉法人の承継おける注意点とは
厚生労働省は2020年に「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」を策定しています。そのガイドラインの中では、社会福祉法人の合併や事業譲渡などを実施する上での手続きや留意点を解説しています。
また、厚生労働省が同じく公開している「合併・事業譲渡等マニュアル」には、実施におけるポイントや留意点がそれぞれまとめられています。
公益性や非営利性を求められる社会福祉法人の事業譲渡においては株式会社等の一般法人における合併や事業譲渡とは違い、様々な制約や所轄庁等行政との綿密な事前相談を経て実行されることを求められます。
特に事業譲渡や合併においては許認可関係や資産の移動が発生するため、実行から完了までに多くの時間を要する場合がある点や年度をまたぐ場合、手続きが重複する場合がある点からも余裕をもった対応が望まれます。
社会福祉法人の事業承継における注意点
社会福祉法人の事業承継には、独自のルールや法律で定義された注意点があります。それらを押さえた上で事業承継を進めていきましょう。
合併は所轄庁の認可を受けなければならない
当然ながら、社会福祉法人は許認可事業となることからも所轄庁より合併の認可を受ける必要があります。
また、合併完了後は2週間以内に、主たる事業所の所在地における所轄の法務局へ新設または変更の登記申請を行う必要があります。
法人外への対価性のない支出は認められていない
社会福祉法人は、条件を満たすことが可能であれば、社会福祉事業によって発生した剰余金を法人の本体の会計、もしくは同一法人が行う公益事業に充当することが可能となっています。ただし、この社会福祉法人ではない相手に対して、対価性のない支出(助成金や補助金等を含みます)を行うことはできません。
また、事業譲渡等においては、譲渡する事業の見積価格を超える金額を事業譲渡の対価としなければなりません。そのため、財産等の対価を決定する際には、財務調査・分析を通して、事業を適切に評価することが求められます。
なお、社会福祉法人には、一般の株式会社でいう“持分”という概念がないため、株式を対価とした合併において吸収される法人に対価が支払われることはありません。そのため、自法人における譲渡事業の価値を見積もり、その価値以上の受取対価でなければ、法人外への資金流出に該当してしまいます。
寄附財産や国庫補助を受けている財産の取り扱いに注意する
対価性のない支出について記載しているとおりにはなりますが、寄附財産や国庫補助を受けている財産がある場合、合併に際しては、書類の提出が必要となります。
事業譲渡の場合は、原則として非課税承認が取り消されるため、被譲渡法人は納税が必要となります。
職員や利用者に事前説明を実施して理解を得ておく
事業継承前後で発生する変化としては、就業規則・待遇・サービス提供内容等に関する変更が発生する場合があります。これらの様々な変化が職員や利用者に対して、困惑や不安を発生させるおそれがあります。
特に、職員の待遇や利用者に対するサービス提供内容の変更に関して、事前説明会を実施したり、個別での相談会を行うことで同意を得たりすることが推奨されます。
また、事業譲渡に際しては、新法人と利用者や利用者家族との間で再契約を行う必要がありますので、これらの書類を事前に準備して、サービスの切れ目が発生しないような配慮も必須です。
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